奨学金の総返済額を、借りる前に知らなかった
— 返済の現実と救済制度
2026年4月1日
この記事でわかること
- ✓奨学金の平均借入額は344.9万円(2024年調査)。約15年かけて返済するのが標準
- ✓第二種の現状利率は年0.3〜1.0%程度。借りた時期によって総利息に数十万円の差が出る
- ✓返還期限猶予(最長10年)と減額返還(最長15年延長)は申請しないと使えない。延滞が先に進む前に知っておく
大学入学前に奨学金を申し込んだとき、総返済額を計算していたか。 月いくら返すことになるのか。利息がどのくらいつくのか。卒業後の何年間、返し続けるのか。
多くの人は確認しなかった。手続きは学校経由で進み、「借りる」ではなく「もらう」感覚で申込書にサインした人もいるだろう。 ある調査では、延滞者の54.4%が返還義務を申込手続き前に認識していなかったと回答している(JASSO調査)。
構造を知れば、返済中の判断も変わる。返済が苦しくなる前に使える制度もある。
平均345万円を15年かけて返す、が標準
中央労福協の2024年調査(全国3,000人)によると、奨学金の平均借入総額は344.9万円(中央値312.1万円)で過去最高水準だ。返済期間は最長20年で、実態の平均は約14〜15年とされる。
月約1.4〜1.6万円を15年間払い続ける
345万円を20年・利率1%で返すと月約1.6万円、総支払約386万円。この返済が社会人スタートから15年続く。住宅ローン・育児費用・老後資金の積み立てと並走する時期と重なる。
第一種(無利子)と第二種(有利子)— 構造の違い
奨学金には2種類ある。第一種は無利子だが、 成績・家庭収入の審査が厳しい。第二種は審査が緩い代わりに利息がつく。 多くの人が第二種、または両方を借りている。
| 第一種 | 第二種 | |
|---|---|---|
| 利率 | 0%(無利子) | 年0.3〜3.0%(上限) |
| 2024年実績利率 | — | 固定0.94〜1.005% / 見直し0.3〜0.4% |
| 月額(私立・自宅外) | 75,600円 | 2〜12万円(選択制) |
| 審査 | 成績・家庭収入の条件あり | 収入基準のみ |
第二種の利率は「利率固定方式」と「利率見直し方式」の2択。固定は貸与終了時の利率がそのまま20年続く。見直しは約5年ごとに市場金利に連動して変わる。 2025年以降は政策金利の引き上げ(0.5%)により、新規貸与終了者の利率は上昇傾向にある。
350万円借りた場合の総返済額
返済期間20年で試算。現状の利率水準(約1%)と法定上限(3%)の差が総利息に与える影響
第一種(無利子)
国公立・成績・家庭収入の条件あり
350万円
総支払額
月返済額
14,583円
利率
0%
総利息
0円
第二種(利率1%・現状水準)
2024年貸与終了者の実績利率(固定)
約386万円
総支払額
月返済額
約16,100円
利率
約1.0%
総利息
約36万円
第二種(利率3%・上限)
法定上限。1990年代〜2000年代前半に該当
約466万円
総支払額
月返済額
約19,400円
利率
3.0%
総利息
約116万円
利率1%と3%では、総利息に80万円の差が出る
同じ350万円を借りても、借りた時期の金利水準で総返済額が大きく変わる。自分の利率と返済方式を「スカラネット・パーソナル」で確認することが出発点になる。
返済が苦しくなる前に知っておく救済制度
JASSOには返済困難者向けの救済制度がある。延滞が続くと延滞金が発生し信用情報にも影響するが、制度を知って申請すれば延滞を回避できる。使い方を知っている人だけが使える仕組みになっている。
返還期限猶予
月々の返還を一時停止できる
適用条件
経済困難・失業・傷病など
最大期間
累計最長10年(120か月)
ポイント
猶予中も延滞扱いにならない
減額返還
月々の返還額を1/2・1/3・1/4・2/3に縮小(返還期間が延長)
適用条件
経済困難・傷病・災害など
最大期間
最長15年延長(180か月)
ポイント
返還総額は変わらないが月負担を減らせる
所得連動返還(第一種のみ)
前年所得に応じて月返還額が毎年変動。所得ゼロでも最低2,000円
適用条件
2017年4月以降採用者で機関保証選択者
最大期間
収入に連動(上限なし)
ポイント
返還が苦しい年は自動的に負担が下がる
申請はスカラネット・パーソナル(オンライン)または郵送で行う。1回の申請で最長12か月分まとめて申請できる。
繰り上げ返済 vs NISA — 現状利率なら数学的にNISA優位
手元に余裕資金ができたとき、奨学金を繰り上げ返済するべきか、NISAに回すべきか。 これは「借入利率 vs 期待投資リターン」の比較で決まる。
| 繰り上げ返済 | NISA(長期積立) | |
|---|---|---|
| 実質リターン | 利率分の節約(0.3〜1.0%) | 期待リターン年3〜5%(インデックス長期) |
| リスク | ゼロ(確実) | 短期は変動あり |
| 流動性 | 一度返したら戻せない | いつでも売却可能 |
| 優位な状況 | 利率が高い・精神的な安心を重視 | 現状の低利率(0.3〜1.0%)では有利 |
利率1.5%を超えたら判断が変わりうる
現状の第二種利率(0.3〜1.0%)は長期インデックス投資の期待リターン(年3〜5%)を大幅に下回る。低利率帯では数学的にNISA優位だが、2025年以降の金利上昇局面では新規貸与の利率が上がる可能性もある。自分の適用利率を確認した上で判断する。
まず確認すること
- 1.
スカラネット・パーソナルにログインして、自分の利率・返済方式・残高を確認する
- 2.
第二種で利率見直し方式を選んでいる場合、今後の金利上昇リスクを把握しておく
- 3.
返済が苦しくなった場合は延滞する前に「返還期限猶予」を申請する(最長10年)
- 4.
利率が1.0%以下なら、繰り上げ返済より新NISAへの積み立てを優先することを検討する
- 5.
利率が1.5%超なら繰り上げ返済 vs NISA を改めて試算する価値がある
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